新型インフルエンザの報道は、やれどこの誰に「感染の疑いがある」とか、メキシコでは何人亡くなったということばかりで、無為に不安を煽っているように見受けられる。
「パンデミック」というある種のバズワードが一人歩きし、場合によってはペストやスペイン風邪のように、世界中の何割もの人が死に至るかのように一般市民をおびえさせているような気がしてならない。
ここはいったん落ち着いて、現状を再確認してみたい(エントリ執筆時点)。
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・メキシコ国内での感染は落ち着き始めている
・ウィルスはあくまで弱毒性で、完全に治癒した人もいる
・メキシコ以外で亡くなった方はアメリカ人に一人。ただし、元々持病を持っていた
・今回のウィルスの分類である「H1N1」は、過去のスペイン風邪、香港風邪と同じ(分類が同じでも対処法は同じではない)
・現時点では弱毒性でも、強毒性へ変異することがある
・「パンデミック」は人から人へ感染することが、世界の一定範囲で確認された場合に宣言されるもので、ウィルスの強さや致死率などとは無関係
・新型でない(季節性の)インフルエンザが5月になってもいまだに収束しておらず、患者数は数千人規模ではるかに多い
という感じで、もちろん注意すべき点はたくさんあるものの、世界人口の何%が死んでしまう、というようなことは考えにくい。
むしろ、秋に訪れる可能性があるといわれる「強毒性への変化」と、それに対するワクチンの対応状況などを積極的に報道すべきではないのだろうか。
こういうと語弊があるだろうが、メディアはある意味で日本ではじめて感染する人を待っている節がある。
強きを挫き、体制の闇を暴くのが彼らの仕事のはずだが、実際のところわが国のメディアがそうなっていないことは、もう認めざるを得ない。視聴率や発行部数が何より大事なメディアにとって「日本初の新型インフルエンザの感染者」というのはセンセーショナルな衝撃をもってトップニュースになるはずだからだ。
「メディアは国民を映す鏡」というけれど、過剰に反応すればするほど、おかしな方向にいくような気がしてならない。
少なくとも、海外から帰ってきた「疑いがある」程度の人をいちいち数え上げて報道しているのは、日本くらいのものではないだろうか。
慎重なのはいいとしても、インフルエンザで高熱にうなされている子どもや若者に対し「良かった。新型じゃなかった」と胸をなでおろす、みたいなのはちょっとおかしいだろう。