『漫画家』とは、才能の塊である

私は漫画を全く読まない。
しかし『漫画家』というものが、とてつもない才能の塊であるということは知っている。
彼らは、特にエンターテイメントの世界で必要とされる数多くの要素を同時に満たす、稀有な存在だ。

1:絵が描ける

もちろん個人差もあるだろうが、漫画家は絵がうまい。
これだけでも、イラストレーターや挿絵ライター、もしくは単純に画家という職業にも就けるかもしれない。絵がうまいというのは、それだけでも食っていける能力だが、漫画家にとってはそれは最低限の前提に過ぎない。

2:ドラマを作り、セリフが書ける

稀に原作者が別の場合もあるが、多くの漫画家はストーリーも自分で考える。これは、映画製作でいえば「脚本家」の仕事であり、彼らは当然それしかしない。
また、そのクオリティも非常に高い。これは、多くの漫画作品がTVドラマのネタ元になっていることからも分かる。
現在の日本のTVドラマは、オリジナル物はとかく敬遠され、漫画などのいわゆる「原作もの」でないと企画が通らないとさえ言われる。それが、同業界のレベルの低下に至ったわけだが。

3:コマ割りができる

今や世界中に多くのファンをもつ北野武監督は、自身の映画のコマ割りを考える際、日本の漫画を参考にするという。
映画(も漫画も)は、あくまで平面的な世界なので、四角い画面に映っているものがすべてだ。
限られた枠の中に何を見せ、何を見せないか。場所(ロケーション)や時間帯、季節、天気、大道具・小道具の配置…… それらをすべて考慮し、シーンを立体的に俯瞰で捉えることができる能力が必要である。
映画製作の現場では、これを専門で行う「撮影監督」という職種すらある。

全体を映した後に顔のアップ、次に手のアップ、小物の動き…… 観客を飽きさせないためには、コマ割りは非常に大事な要素だ。すべての漫画家がこれらを意識しているかどうかは分からないが、実際非常に高度な能力が要求されることは間違いない。

4:演出ができる

セリフの内容だけではなく、それをどんな表情で言うのか。その時どんな心情なのか。それまでどんな経緯があったから、その行動につながっているのか。
すべてのキャラクターの行動には意味があり、それに反応したアクションを起こす。それをすべて理解し、どうすればもっとも観客に伝わるかを考える時、演出家が必要になってくる。

言うまでもなく、これは映画でいう監督の仕事だ。
カメラ位置やセリフだけではなく、感情の機微や細かい所作まで頭の中に描き、作品全体に責任を持てなけなければ、この仕事は行えない。

当然単純に比較することはできないが、『漫画家』といわれる人は、これらの能力を高い水準で保持しており、おそらくどれに特化してもプロフェッショナルとして活躍できるだろう。
一部の突出した人気作家だけではなく、プロとして漫画を描く人には、これらの能力が満遍なく備わっているはずだ。

しかし、日本の漫画家の方たちの境遇は、お世辞にもいいものとは言えないように思う。
週刊連載に追われ、出版社や放送局の割の合わない中間搾取と戦い、人気がでたらでたで本意でないストーリーを延々と描き続ける。まるで、命をすり減らして描き続けているようにさえ見える。

市場規模の問題もあるだろうが、この才能溢れる存在をおざなりにするのは、日本文化にとって好ましくないように思える。
ということで、ここまで言っておいて自分が読んでないのも恥ずかしいので、どなたかオススメの漫画を教えてください(違

はてぶiPad記事に見る、ソーシャルとマスの境目

はてなブックマークで、とある記事が多くのブックマークを集めていた。

はてな近藤淳也が日本経済新聞社に潜入! 話題の日本経済新聞 電子版について体験してみた

「何でこんな提灯記事が?(失礼)」と思ったのだが、どうやらブクマするとiPadがもらえるとのこと。
なるほどな、と思ったのだが、これはソーシャルブックマーク(SBM)の根底が崩れることになりかねないのでは、と感じたのでエントリにしてみた。

SBMの利点の一つは、自分で記事を探す手間を省けることだ。多くのブックマークを集めている記事は何かしら話題になっていたり、大勢の人が読む価値があると判断している可能性が高い。
実際、そうでない使い方(一歩離れたところから意見を言ったり、disりあったりすること)がメインストリームになりつつあるけどそれはおいといて、本来はそのような理想像があるはずだ。

はてなブックマークは、日本で最大のSBMだろう。
初期の頃から比べれば、利用者も大分増えてきたように思う。

はてなが一企業である以上、このように自社サービスをマネタイズすることは、何ら否定されるべきことではない。
特にお金儲けが下手といわれるはてなが、このようなことを行ったのはある一面では評価できるとおもう。

しかし、すべてがこんな記事で溢れかえってしまったらどうなのだろう。
はてなのホットエントリが「ブックマークしてくれれば○○円あげます!」というキャンペーンページで埋め尽くされたら、はてブはその価値を失ってしまうのではなかろうか。
皮肉にも、はてブが有名になればなるほど、メディアとしての価値を高めれば高めるほど、そのような使い方をされる可能性が高まる。

それはある種のスパム行為とも言えるけど、はてな自身が行っている以上、他社が同様のことをするのを責めることはできないはずだ。

そうなると、ユーザとしては「もうはてブはダメだね。やっぱりライブドアクリップだよね」なんてことにならないだろうか。
結局、運営母体として力を持っている(SBMだけで食っていかなくてもいい)ような企業に、おいしいところを持っていかれる危険も孕んでいそうだ。

ウェブサービスのマネタイズは試行錯誤の段階だと思うが、特にソーシャル系のサービスでは、非常に神経質にやるべきなのでは、と思った春の日。