幼い頃、細かい硬貨を数えていた母がポツリと「もう1円なんてなくなればいいのにねぇ」とつぶやいていたのをふと思い出した。
最近、これはもしかしたらとても進んだ経済概念なのではないかと思えてきた。
これは大きなコストがかかるであろう、いわゆる「デノミ(貨幣の単位の切り下げ、100円を1円とするなど)」ではなく、単純に硬貨としての1円と5円の流通をやめるということだ。
これにより、今まで1円だったものは10円に、55円だったものは60円になると仮定する。
こんなことを言うと「うちは1円単位で節約してるんです!」と烈火のごとく怒る人が出てくるだろう。
では、1円を節約するとはどういうことか。
2011年の最低賃金645円を元に計算すると、1分あたりの賃金は10.75円で、1円の価値は約6秒である。
ということは「1円の節約」は最低でも6秒以内にできなくてはならず、いつものスーパーから10円安いスーパーに変えるためには、1分以内に移動しなくてはならない(それをやるくらいなら働いたほうがいい)、ということになる。
確かに物価は上昇するが消費税増税ほどではないし、「1円単位の節約」というあまり効果が期待できない行動から消費者を遠ざける、という意味でも有効ではなかろうか。
それに、1円や5円の製造にかかる(金銭的・時間的な)コストはいかほどだろう。
正確な数字は出せないが、鋳造、輸送、両替、レジでお釣りを渡す時間…… なかなかのものだ。
そもそも、現在10円以下で買えるものはほとんどなく、1円と5円は上位貨幣の補助の役割しかないではないか。
どれほどの(逆含め)効果があるのかまったく未知数だけども、うまく行けばうまく行きそうな気もしないではない。少なくとも「損する人が誰もいなそう」という意味で、優れた施策な感じがする。
書きながらも、合成の誤謬臭がプンプンするけども、どっかに大きな穴があるのだろうな。