評点:63点(100点満点中)
食の現場とそこで働く人々を淡々と映し出した、ドキュメンタリー映画。台詞は一切なし。
野菜や果物を摘み取る姿はもちろん、豚や牛を屠殺していく様もはっきりと撮影されている。
死の恐怖におびえて暴れる牛。しかしオートメーションの巨大な機械に乗せられ、流れ作業の中、空気銃で頭を打ち抜かれ一瞬で屠殺される。体は半分に裂かれ、内臓を丁寧に取り出されて次第に我々が見慣れている肉製品の形になっていく。
非常に淡々と作業をこなす人たちの姿が、その様子をより際立たせていた。
ややもすると目を背けたくなるような描写だが、画面は落ち着いていて、美しくすらもある。おそらくいくつかの撮影技術を多用しているのだろう。そのあたりは監督や編集の手腕だと思う。
食肉の加工や、食物の生産現場に直接居合わせない私を含めた多くの人々は、スーパーでパックに入った肉片しか見ることがない。テレビでは、油の滴る高級な肉を映し出しては「おいしそう~」とタレントたちが笑っている。
それはそれでいいと思う。しかし、我々が食べているのは紛れもなく牛や豚という動物だ。それは、紛れもない命の塊だ。確かに、我々に命を与えるために生まれてきた命ではあるけれど。
そこには、毎日動物の血にまみれながら働く人々がいる。そして、いつか我々の命をつなぐために今生きている命がある。ついぞ忘れがちで、あえて目を背けようとしている真実を、改めてみてみようという勇気がある方は、ぜひご覧になることをオススメする。
月並みだが、これを観た後では肉の一枚も無駄にしてはいけないのだと、改めて認識できる。子どもに見せるべき映画だと思う。