国内最大級の宗教団体である「創価学会」。
日本人ならみなが知る団体であるのに、公の場でその名を口にすることが憚れるという、不思議な集団でもある。
しかし、600万世帯、1,000万人以上の会員がいる割に、我々(私)はその実に関してあまりにも知らなすぎる。
本書は、彼らを極端に非難するわけでも賛美するわけでもなく、その内実を設立から現在まで忠実にかつ中立的に記している。ある意味、非常に貴重な「資料」でもある。
創価学会は、牧口常三郎という人物によって創設された。
当初は宗教的な要素はなく、柳田國男や新渡戸稲造など当時の知識層が集まったインテリ集団だった。
その後、二代目の戸田城聖を経て、現在の池田大作にいたる。
池田は、実業家としてもその手腕を存分に発揮し、現在の創価学会は彼なくしては語れない。
それにしてもおそるべくは、池田大作のカリスマ性だ。創始者をもしのぐそれは、今も多くの信者や側近の心を捉えて離さない。
本書中にも創価学会の取材をした数々の著名な評論家が登場するが、そのすべてが池田大作に人間的に魅了されたという。
本書では創価学会への直接的な取材はされていないようだが、著者は中立的な立場を守りたかったために、あえてそうしたのかもしれない。
彼らがその力を伸ばしたのは、日本の国力がまだ弱かったころ。彼らは、主に地方から都会に出てきた労働階級の人々を取り込んでいった。
地方から単身上京した孤独感と、食うものも食えずの生活は今では容易には想像できないだろう。そんな世の中で「入信すれば救われる」「仲間もいる」と誘われれば、責めることはできない。
芸能人の入信者が多いのも創価学会の特徴だ。本書では、その理由も列記している。興味のある方はぜひ読んでいただきたい。
前述のように、著者は基本的に中立的な立場ではあるが、最後にある警鐘を鳴らす。
それは、創価学会が力を伸ばした当時の世相と、格差が広がり貧困層が増えた現在が似ている、というものだ。それを彼らが感じてないはずがない。貧困層の広がりは、ある特定の集団にとってはチャンスでもあるということだろう。
彼らを一概に「危険」であると言うのはナンセンスかも知れないが、政教一体となり巨大な力を持っていることは確かだ。
腫れ物に触るように、「社会の暗部」として押し込めてしまうのではなく、自分たちの一部としてきちんと見つめていなければいけない存在なのだろう。
「食わず嫌い」をせず、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。