寄付をやめて、株を買おう

東北地方太平洋沖地震の影響で、先週の日経平均は大混乱の様相を呈した。
15日の下落率はリーマン・ショック時に次ぐ過去3番目、一時はブラック・マンデー時にも迫ろうかという暴落ぶりだった。

しかしあくまで個人的な意見だが、私も世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏に同じく、これは完全に市場の動揺だと考えている。

日本の市場に多くの投資をしているのは外国人投資家だ。その割合は、20%から多いときには50%を超えることもある。

今回の暴落は、その外国人投資家の日本経済への悲観論と、原発の問題が予想以上に長引くのではないかという憶測(言い換えれば、政府主導による情報公開の失敗により、要らぬ心配を与えてしまったこと)が大いに関係していると思われる。
それによって引き起こされた国内投資家のパニック売りで、売りが売りを呼ぶ展開になってしまった。

賢明な外国人投資家はすぐに戻ってくるかもしれない。しかしそうでなければ、しばらく日本市場はキャッシュが不足し、経済が停滞する負のスパイラルに陥る可能性がある。

だから今こそ、経済の面で日本人が日本を支えなくてはいけない。真の復興は、再び正常な経済生活を送れるその日にあるのだから。

もちろん、寄付も大事だ。被災者の方々にとって今最も必要なことは、ダイレクトに援助が届く寄付金だろう。
しかし長いスパンで見れば、家や職を失った人が再び働ける場所があること、モノを作り、それを売って、生活の糧とする日常が戻ることが何よりも重要だ。

今回の被災で大打撃をくらったのは個人だけではない。企業も大きな痛手を蒙った。このまま市場にキャッシュが不足すれば、多くの企業が連鎖的にバタバタと倒れてしまう。

言葉は悪いかもしれないが、どうせあげてしまうなら、なくなってもいい気持ちで信頼できる企業に投資してはどうだろう。
そうして企業が持ち直して利益が出れば、そのお金をまた投資に回すのもよし、寄付するのもよしだ。我々の戦いは、思っているより先が長い。

当初は同情的だった海外の報道も、今は日本経済への悲観論に変わりつつある。

たしかに、我々は大事な多くのものを失ってしまった。悲しみに沈み、もう一歩も前に進めない人もいるだろう。
しかし、皆がそうではないはずだ。辛く苦しい日々を送る人たちのためにも、このまま終わる国じゃないことを証明しなければ。復興へと歩を進め、底力を見せる時だ。

だから今こそ、日本株を買おうではないか。

死者数ばかりに目が行く自分に自戒を込めて

以下、自分のことを棚にあげて言います。

この未曽有の危機の中、テレビで報道されるのは「死者・行方不明者の数が何人に達した」「原発から放射能漏れの危険」ばかり。
自分も含め、こんな時はついネガティブな情報に目が行きがちになる。目に見えてショッキングだからだろう。

しかし、これだけ横並びで同じような報道ばかりしているのなら、民放のひとつくらいは被災者の方向けに情報を流したらどうだろうか。

自衛隊は今どこに向かっています、いつ頃までに物資が届きます、各企業が身を削って支援を表明しています。
それらは寒さに震える被災者の方に伝わっているのだろうか。テレビやラジオが見られない、というのは別として。

そもそも、ミッシングリストを放送しているのだって、教育テレビだけじゃないか。
被災者や関係者が今一番知りたいのは、身内の安否だろう。

不安に押しつぶされながら、今も助けを待っている人たちがいる。
その人達を救うべく、昼夜を問わずに命がけで立ち向かう人達がいる。

既に16,000人の方が救出されたこと、100以上の国と地域から支援の申し入れがあること、それを知っている人はどれだけいるのか。それがどれだけ被災者の方の希望になるか。
このたった一枚の写真が、どれだけの人を笑顔にさせるだろう。

たとえ福島原発がメルトダウンしたってチェルノブイリ事故のようにはならないことを、むしろその後の電力供給不足に対する懸念のほうがはるかに大きいことを、どうして報道しないのか。どうして不安ばかり煽るのか。こんな時でも、考えるのは視聴率のことばかりなのか。CMだってないのに。

それができないなら、民放局こそ輪番停電してほしい。

あるベテランエンジニアの終着駅

先日、以前勤めていた会社の上司たちとお会いする機会があった。
今では全員が転職しており、各自がそれぞれ選んだ道と当時の裏話を懐かしく語った。

当日は不在だったのだが、その会社にはとあるベテランエンジニアの方がいた。私は直属の部下ではなかったが、エンジニアたちをまとめる長だった方だ。

とにかくコワイ人で、相手が取締役だろうが社長だろうが奮然と立ち向かい、大声を上げる。立派なヒゲを蓄えのしのしと歩く姿は、ペーペーだった私ならずとも畏怖すべき存在だった。
技術一筋、それ以外の尺度はこの世に存在しない。そういう人だから、部下たちの信頼は篤かった。

その会社はとある外部事情で大きな赤字を抱えており、起死回生、乾坤一擲のプロジェクトをいくつか走らせていた。我々はそのうちの一つを任されており、それはもう朝もなく夜もなく働いた。

しかし、残念ながらうまくいくことはなかった。どうしても続けたかったワガママも届かず、経営陣はプロジェクトの中止を決めた。
それでもなおあの方はヒゲを震わせて怒りまくっていたが、その頃から立場は怪しくなってきた。

きっと随分前からみな気づいていたんだ。その方がもう時代遅れの技術しか持っていないことを。もしかしたら、その人自身も。
この世界の変化の速さについて行けなかったのだ。新しい技術を身につけ、理解することができなかった。

豊富な経験は寂れた過去になり、使い物にならなくなった。メンバーの意気が下がり始めたのと同時に、求心力も急速に下降していった。

選択と集中という言葉を出すまでもなく、我々は社内でうまくいっている部署へと散り散りになった。
そしてその方を含めたベテラン勢は、今までの半分以下の年俸を提示され、事実上のリストラとなった。

そんなみなさんが、今でもバイタリティに溢れ、たくましく活躍されていたのは頼もしかった。
ただ一人、経営に携わることもなく、営業の経験もなく、でも社内では人一倍恐れられていたあの方だけは、どこにも行けなかった。

彼は先日、出家したそうだ。
ご婦人や、成人したお子さんとはもう一緒に暮らしていないという。

私はそれを聞いた瞬間、思わず大声で笑ってしまった。
あのカミナリ親父が坊さんになったのか。年の割には艶のあった髪の毛も、全部剃り落としてしまったのだろう。あのヒゲも、きっとすっかりなくなっているに違いない。想像しただけでおかしかった。

笑って笑って、笑いすぎたあとに泣けてきた。
あれだけの部下を抱え、あれだけ自分の仕事に誇りを持ち、そしてあれだけ怖かった、技術一筋に生きてきた人が最後にたどり着いたのが出家とは。現実とは、かくも厳しいものなのか。

先のことなど誰にも分からない。自分らしく生きていくために今からできることはなんだろうか。
深く考えさせられた夜、空には月が浮かんでいた。

セカイカメラは、ソーシャルゲームの波に呑まれてしまった

最初に、私はソーシャルゲームを否定も肯定もしない。
様々な問題をはらんでいるのは確かだが、スキマ時間に暇を潰したり、友達と楽しんだりするのに使っている人も大勢いるだろう。コミュニティサービスは、どんなものでも功罪双方の面がある。

以前に「セカイカメラは飽きる」というエントリを書いておいてなんだが、ARは確かに未来を感じさせる「何か」だった。

世界中のベンチャーが集まる、TechCrunch 50を熱狂させた「セカイカメラ」
あれから数年の歳月が流れ、結局は日本のモバイルソーシャルゲームの波に呑まれてしまった。

頓智ドットがGREE向け第一弾と銘打ち、ソーシャルゲームを発表した。

会社として経営していく以上、お金を稼がなければならない。だからこそ、今の日本で最も収益化の期待が持てるソーシャルゲーム市場に出ることは、経営者として賢明な判断だ。
しかしやはりARでは、リアル世界でマネタイズすることは難しかったのか。

頓智ドットは、他にもたくさんのサービスをリリースしている。今後もきっとそうだろう。
しかし、私たちに崇高な未来を見せてくれた同社は、今後GREE向けにやモバゲー向けにゲーム開発するベンチャーの一つになる。これは間違いないと思う。

AR、ひいてはセカイカメラには、確かに未来を感じさせるものがあった。
今までの常識を、我々の生活を根本から覆す何かがそこにはあるのではないか。そんな「何かやらかしてくれそうな」期待があった。

それが私の勝手で過剰な期待だったといえばそれまで。
ただ、未来がまた少し遠くなってしまった気がした。

ブサイクでもモテる理由は「ポジティブさ」にあった

「※ただしイケメンに限る」が流行語になったのは、はや一昨年のことだが、世間には「ブサイクだけどモテる」と言われる人がいる。先日、まさにその属性の人とじっくり話す機会があったのだが、とても興味深い話が聞けた。
そして結果的に、彼がモテるのはその底抜けの「ポジティブさ」にあると分かった。

まず、
女性を誘うときに考えること
・女性からは誘いづらい
・向こうは誘いたいと思っているかもしれない(←多分たいがい思ってない)
・例え断られても、恥をかくのは自分でいい
・何なら、向こうのモテモテ話の一つに加えてくれればそれでよし

という、大変前向き?なものだった。これだけでも強靭なハートを持っているなぁと感心した。

次に、
誘いに対して中々返事がなかった場合
・たまたま、たくさんの偶然が重なって返事が遅れている
・忘れてしまった(そしてそれは仕方ない。まだ自分は相手にとって取るに足らない存在だから)
・病気とかしてるかもしれないからむしろ心配

という、踏んづけてもしがみついてくる姿勢に感嘆した。
しかし、さすがに一ヶ月も二ヶ月も返事が来ないと彼も後ろ向きになるそうだが、「もうダメかもしれないけど、ここで終わる訳にもいかない。進むしか選択肢がない」と自分を奮い立たせ、迷惑でも今一度チャレンジするのだそうだ。

ちなみに断られた理由で多いのは、
1位:仕事が忙しい
2位:体調が悪い
3位:予定が合わない

という感じで、中には「今気分が落ち込んでいるので、無意識に傷つけてしまいそう」「ペットが病気」「長期旅行する」「留学する」という、明らかなウソもあったが、それを信じるのが礼儀だし、自分が傷つかないための防衛策なんだとか。

ただ単にしつこい男と思われないのか、そこまでしてダメだったら辛くないのか、と聞くと「辛い時もあるが、別に努力してるつもりもなく考え方を変えただけ。それに、イチローとかすごい人に比べれば大したことはない」という、深いんだか意味不明なんだか分からない回答をもらった。

彼はそれほど話術に長けているわけでもなく、俗にいう「コミュ力」が際立っているとも思えない。
ただ、何というか憎めない人の良さがあって、こんなに女の子の尻を追いかけていても、何故か同性からも異性からも好かれるのは確かだ。

このポジティブさは誰もが持てるわけではないけれど、何だかちょっとだけ見習いたい気持ちにもなった。