GREEがmixiを超える日

mixiとGREEといえば、日本のSNSを黎明期から支えた存在だろう。

ひと足はやく開始したGREEは、日本初の本格的SNSとして流行に敏感な人たちに熱狂をもたらした。
創設当時に(確か2回)開催されたオフ会「GREE Night」は、「geekな人たち」を集めて大変な盛り上がりを見せ、今では語り草だ。

しかし、ブログとの差別化を意識していたことや、(多分)Friendsterをモデルにしていたので、当初は日記がなかった。

一方でmixiは、日記、およびコミュニティ機能を早々に導入。また、UIが大変優れていた。
社長の笠原さん本人も言うように、日本人の好みをよく追求したサイトデザインで広く受け入れられることになる。

それでもGREEは「わが道を行く」だったのだが、遂に両者は逆転し、その後の流れはご存知の通り。
mixiは上場も果たし「SNSは2ついらない」を地でいくかのような快進撃を続けた。

GREEも遅ればせながら、日記、コミュニティを投入するものの、時すでに遅し。
このままmixiに正面から挑み続けるのは明らかに無謀に思えた。

そんな折、GREEは大きな転換点を迎えることになる。

彼らは自らのIdentityでもあった「招待制」を廃し、2006年11月16日、auユーザに開放。
最も大事にしていたはずの「つながり」を捨て、物量作戦に出たのだ。

これと共に、ゲーム、アバターなどを開始し「モバイル」に特化した。
GREEは、SNSを捨てた。

当時のユーザの反発はなかなかすさまじかった
特に、アバターを強制表示にした頃の、田中社長がアバターをほめちぎった日記は思いっきり炎上した。

当時私は、あれだけ「トンガッテ」いたGREEが、思いっきり大衆向け、しかもゲームやアバターなどの低年齢向けにシフトチェンジしたことに驚いた。
一方でmixiのSNSとしての勢いは止まらず、現在の事実上の独占状態に至るまでになったのだった。

しかし、ここにきてGREEが不死鳥のごとくよみがえってきた。
SNSを捨てたGREEが「モバイルゲームサイト」として復活したのだ。

ここで二つのサービスの数字を比べてみると、

モバイル版 月間PV

    mixi:100億
    GREE:100億

PC版 月間PV

    mixi:50億
    GREE:1億

売り上げ

    mixi:120億円(2009年3月期通期単体)
    GREE:112億円(2009年6月期通期単体(予想))

PC版のPVはまったく異なるが、それ以外はほぼ同じ水準だ。おそらく、売り上げでGREEが上回るのはもう時間の問題だろう。
ちなみに、株価時価総額に照らした両社長の資産総額では

    笠原氏:452億円
    田中氏:800億円

と、倍近い差だ。

競合に勝つための施策と言えば、新しい機能を導入して「差別化」を図るとか、ターゲットの年齢層を変えるとかが普通だと思う。しかし、GREEは違った。
それが最初から意図したものだったのかは分からないけど、少なくともGREEは、ユーザの反発や離脱を覚悟でいくつかの博打を打ち、それに勝ったといえるのではないだろうか。
愛想をつかして去っていったユーザも多かっただろうが、GREEはビジネスでの成功を確実に手にしたのだった。

それにしても、やはりこれからのWebビジネスは、広告から、コンテンツをサイトで直接販売する方式にますます移行していくように思う。

テレビやラジオの広告費が年々落ち込み、ネットだけはいまだに右肩上がりだ。
現王者のテレビも、ネットに抜かれるのは時間の問題だと言われている。

しかし個人的には、ネットが普及するにしたがって「広告費」そのものが(景気などは関係なく)縮小するのではないかと考える。

商品の流通をごく単純化すると
 原材料調達 → 製造 → 宣伝・販売 → 購入

となり、ところどころに運搬や「仲介人」が発生するわけだ。
しかしネットの普及によってこの「仲介人」を極力省略できるようになったわけで、消費者は自ら能動的によい商品を探し、製造元から直接買い付けることもできるようになった。

もちろん広告自体がなくなることはありえないけど、情報を自分で得やすくなった分、広告費も縮小していくんじゃないかと。少なくとも、もう右肩上がりの神話はなくなるんじゃないかと思う。

となるとやはり「好きなものを好きなだけ、直接購入できる」仕組みを追及していくほうが、ネットそのものの利点を活かすためにも効率的だと思う。

「テレビは終わった」なんて言う人もいるが、ビジネスモデルは結局旧媒体と変わっていない。
色んな意味で「もう一歩踏み込んだサービスを提供しなければいけない」時代が、もうすぐそこに迫っているんじゃないだろうか。

ペットは、飼うこと自体が人間のエゴ

昔勤めていた会社の近所に、大型のペットショップがあった。
営業時間は、確かお昼頃から夜中の12時くらいまでだ。

その間、生まれたばかりの子犬や子猫が通りに面したショーケースに入れられ、道行く人にさらされている。
多くの人が足を止め、「かわいいー」とか「欲しい!」と声をあげていた。

人間が動物と共に生活するようになったのは、生活のためだ。
牛は乳を出すし、羊は毛が加工できる。馬を移動手段に、鳥は手なずけて魚をとる手段にした。

ただ、その中でも特に犬と猫はその愛らしさゆえに「愛玩」という目的のみで人間と共に暮らすようになったのだろう。

彼らは人間に都合のいいように改良され続けた。足は短く、瞳は大きく、体は華奢に…
そうして、およそ自然界では生き残れないような生物が次々と生み出されていくことになった。

猟犬に狩りをさせて生活している人は別として、現代社会においてペットを飼う目的は、ヒトの「寂しさ」やら「生きがい」を埋めることだけ、というのに異論はないと思う。

人間が欲求を充足するのは勝手だ。
しかし、それに使われた動物たちも同じように満足できる日々を送っているのだろうか。

例えば、犬は主従関係を好む。飼い主を「主人」として敬愛し、一緒にいることで満たされる。
飼い主、ペット、どちらも満足しているのだからいいじゃないか。確かにそうだ。

しかしペットの側は、実は代償としてさまざまなものを払っているんじゃなかろうか。
満足な食事と安全を受け取る代わりに、住む場所を制限され、リードでつながれ、満足に走り回ることもできない。

人間の側には代償があるだろうか。
ペットがいることで自由に外出できない、部屋の掃除が大変、諸々の費用がかかる。
それらはただの「義務」で、「代償」とは呼べない。犬を飼うと一生肉が食えなくなる、というのだったら代償だけど。

人間は自ら動物たちを生産し、彼らを制限し、あえて苦労を買ってそれを消費している。

個人的な意見だが、もし自分が鳥だったらカゴではなく空を飛びたいし、魚だったら水槽ではなく海を泳ぎたい。

だから動物は飼わない。彼らに依存したくないし、彼らの命を受け止める度量もないから。
よくおかしな考え方だと言われるが、多分そうなんだろう。

もちろん、ペットを飼う人すべてを否定するつもりもない。

ただ、そもそもペットを飼うこと自体、人間の欲を満たすエゴ以外の理由がない、ということを忘れないでもらいたい。動物たちは、そのために「わざわざ作られた生物」なのだ。

別にあなたが生き物を飼わなくたって、誰も困らないんだ。

かわいいから、寂しいからという理由で安易に生き物を飼う人が多いから、日本の悪質なペットショップ産業はいつまでたっても改善されない。生まれたばかりの子犬が親から引き離されて、夜になっても明るいショーケースで不特定多数の人々の視線にさらされるというのは、生き物の営みとして異常だ。

何だか論点がずれまくりだけど、ペットという絶対的な支配下を身近に置くのなら、相応の覚悟を決めてからにして欲しいと願わずにはいられない。

便利なWordPressプラグイン、用途別27個まとめ

リクエストをいただいたため、利用しているWordPressのプラグインをまとめてみます。
面白がって色々と試してみたので、気がついたらなんと27個にもなっていました…

現状半分くらいしか使っていませんが、すべて非常に優れたものばかりです。
これからWordPressでサイトを作ろうという方の参考になれば幸いです。
 ※使用しているWordPressのバージョンは、現時点で最新の2.7.1です。

■Post系

Akismet

    コメント、トラックバックのスパムを自動的に判定し、除外してくれる。
    今のところ、判定の精度は100%です。最新のWordPress日本語版にも、デフォルトで同梱されています。

WP Multibyte Patch

    WordPressのマルチバイト対策プラグイン。こちらも、初期時点で同梱。

FeedBurner FeedSmith

    WordpressのRSSを、FeedBurnerのRSSに置き換えてくれるもの。
    特段、FeedBurnerを利用する予定がない人は不要かと思います。

brBrbr

    日本の方が作られたもので、何気に一番重宝しているかもしれません。
    WordPressはHTMLとWYSIWYGの2つのエディタがあるのですが、XHTMLに準拠しているため両方とも改行が効きません。
    それは分かるのですが、「ここで改行をたくさん入れて…」みたいな場合は、いったんテキストエディタなどで書いたものをコピペするしかなく、結構面倒くさい…

    それを解決するのがこのプラグイン。Enterキーの改行が有効になります。
    ただし、HTMLエディタでのみ有効で、途中でWYSIWYGに戻ると改行もなくなっちゃうので要注意。

NoFollow Free

    トラックバックやコメント欄のリンクに入る『nofollow』タグを無効化できるというもの。
    リンク先に評価を与えるため「コメント、トラバ、ウェルカムですよ!」というアピールになります。

WP-Polls

    簡易アンケートフォームを作れます。
    当サイトでは利用していませんが、とても人気のあるプラグインですね。

Smart Update Pinger

    WordPressにデフォルトで導入されているPing送信機能の強化版。
    「Ping送信しない」を選択できたり、成功or失敗を教えてくれたりするので使いやすいです。

■デザイン系

Popular Posts

    サイドバーに「人気の投稿」を表示させる。
    これのいいところは、記事名の前後を自由にカスタマイズできる点。

    当サイトでは「はてなブックマーク」のブックマーク数を表示していますが、本来ならPHPを直接いじらなければならないところ、設定画面で一行入力するだけで簡単にできました。

WP-PostViews

    上記の「Popular Posts」とほぼ同じです。
    記事の閲覧回数を表示してくれるので、それを望む方はこちらがオススメ。

Popularity Contest

    PVだけではなく、トラックバックやコメントの数、更にその重要度を自分で設定して、総合的な「人気の記事」を作成できます。
    カテゴリー別のランキングも作成できるなど、凝り性の方に。

Post-Plugin Library

    サイドバーに「この記事に似た記事」「ランダム記事」「最新の記事」「最近のコメント」などを表示してくれます。
    当サイトでは最後の2つのみを利用しています。

WP-PageNavi

    トップページの最下部にあるように、Googleの検索結果のようなページナビを表示してくれます。
    WordPressデフォルトのナビは「<< >>」だけなので、これは入れておいたほうがいいと思います。
    もちろん、カラーの変更は自由にできます。

Trackping Separator

    WordPressは、デフォルトではコメントとトラックバックが一緒になっているのですが、それを分けられるプラグインです。
    デザイン全体に関わる変更を伴うため、導入するのであれば最初から入れた方がいいです。

    当サイトでは最初にテンプレートを大幅に変更していたため、nire.comさんを参考にPHPを書き換えました。

Ktai Style

    入れとくだけで、自動的にケータイ対応になるというスグレモノ。
    これも超有名ですね。

Contact Form 7

    お問い合わせページを簡単に作れます。
    「Simple but flexible」の文句の通り、ラジオボタン、チェックボックス、ドロップダウンまで非常に簡単に作成できます。
    これを利用して作ったのが、当サイトのお問い合わせページです。

    日本のエンジニアの方が作ったPluginですが、世界中で人気急上昇中です。すごい!

Custom Query String Reloaded

    これも結構オススメ。
    WordPressでは、1ページに表示する投稿の数を指定できますが、それがすべてのページに適用されてしまいます。
    これを使えば、例えば記事全文を表示しているトップページは最新3件までで、タイトルだけを表示するページは30件ずつ、といったことが可能になります。

    より柔軟なページ構成ができるようになると思います。

Flickr Photo Album

    Flickr系は本当にたくさんのプラグインがあって困りました…
    色々試した末に、このサイトの作りに一番合っていたのがこれ。できたのがこのページ

    利用目的(たとえばサイドバーにスライドショーさせたいなど)にもよると思うので、用途に合わせたものを選択するのがいいかと思います。
    他には以下など。

    Flickr Manager
    Flickr Gallery
    flickrRSS
    Slickr Gallery

■SEO系

All in One SEO Pack

    数あるプラグインの中で、最もダウンロードされている定番中の定番。
    サイトのDescription、Keywordsをはじめ、記事ごとにページタイトルを変えられるなど、SEOに必要な要素はほぼ網羅している感じです。

    日本語版も出ています。

Google XML Sitemaps

    Sitemap XMLを自動的に生成してくれる。
    GoogleだけではなくYahooやMSN向けにも有効で、非常に細かい設定が可能です。

■測定・分析系

WordPress.com Stats

    Stats系の定番。
    ページごとのPV、検索ワード、遷移元・先など基本的なデータが分かります。
    リアルタイムで分かるので非常に便利です。便利すぎて、一日に何度も見ないように気をつけてください:)

Ultimate Google Analytics

    新しく記事を作成すると、自動的にGoogle Analyticsのコードを埋め込んでくれます。
    ただ、上記の「WordPress.com Stats」がリアルタイムで見られるので、ほとんど使うことはなくなりました。

■その他

WordPress Database Backup

    やはりバックアップは重要。ということで、念のため入れています。

WP Super Cache

    ページ自体をキャッシュすることで、表示速度を向上してくれます。

    効果のほどは、とりあえず入れないよりは入れたほうがいいかな…?という程度ですが、環境(特に自宅サーバなど)によっては劇的に変わる場合もあるようです。

    上記の「Ktai Style」と併用する際に注意が必要です。

WordPressは日々色んなプラグインが登場するので、見ているだけでも楽しくなります。
アップデートの際もボタンひとつですむんで、本当に便利ですね。

それぞれのプラグインには日本語対応版もかなりあると思います。
「プラグイン名 日本語」とかでググってみてください。

[読書]iPS細胞 八代嘉美

2007年11月、世界に激震が走った。
「体のどんな部位にも応用できる細胞を培養し、悪い部分はすべて良いものに取り替えることができる技術が開発された。正に再生医療の未来を変える大発見だ!」

国内外のマスコミは一斉に総毛だった。
一般の人たちも、そんな夢のようなことが実現しようとしているのか、と期待に胸を膨らませた。

それから一年あまり。iPS細胞の研究はどこまで進んでいるのか。また、そもそもiPS細胞とは何なのか。
それに興味がある方は是非読んでいただきたい良書だった。

まず、iPS細胞の話をするにはその前提となる知識が必要であり、筆者はそれを丁寧に説明してくれる。
全9章の中で、実に6章までをその前提の説明に割いている。iPS細胞の話は、基本的に残りの3章のみだ。

「イモリの尻尾は、切られてもまた生えてくる。しかし人間がそうでないのはなぜか」
という「知ってるけどなぜかは分からない」基本的な疑問から、人間とその他生物の仕組みの違いを説明。
なるほど。だから爪ははがれてもまた伸びてくるが、指が切れても生えてこないんだな、と当たり前のことに納得させられる。

確かに、私のような門外漢には初めて見る言葉ばかりだが、一般人にもなるべく理解しやすいよう気を遣っているのがよく分かる。
また、随所に織り交ぜられた「人体豆知識」も非常に参考になる。「へぇ~ そうなんだ」と唸ることしきり。自分の体をいかに知らないか、そしてそれがいかに芸術的なほど「美しい」仕組みによって成り立っているのかを、改めて思い知らされた。

また、iPS細胞が何でもかなえてくれる魔法の手段ではないこともきちんと説いている。
実用にはまだまだ研究が必要だし、そのためには解明しなければならないことが山ほどあるという。だからこそ、日本政府は積極的にサポートすべきだと改めて感じた。世界に対する絶好の外交アピールにもなるじゃないか。

そして最終章に収められているのは、この先端科学を研究する上で避けては通れない課題のひとつ。倫理の問題だ。
生命の源である、受精卵の胚をつかうことになるES細胞。もちろん、時にはそれを破壊する必要もある。
iPS細胞は体細胞を利用するものの、両者の研究は密接に関連しており、iPSの未来のためにはES細胞の研究はなくてはならないとのこと。

「命の根源」を研究目的で扱うES細胞に対し懸念を示していた、ローマ法王やブッシュ元米大統領。しかし山中教授らのiPS細胞には、手のひらを返したように歓迎したのだ。
しかし筆者はその矛盾を指摘し、それでもなお「生命の根源」を科学的に突き詰めることの正当性、有意性を主張する。そこには、その先に見える未来を強く信ずる確固たる信念を垣間見た。これが研究者魂というやつだろうか。

驚いたのは、筆者は東京大学大学院の博士課程を履修中で、いわばまだ学生なのだそうだ。
ガンダムからフランケンシュタインまで、生命科学だけではなく本当に幅広い知識を持っていることが分かる文章からも、読了するまでどこかの教授が書いたものだと思っていたが、1976年生まれの若い人だとは。

このような人が世界が注目する研究の最先端にいることに、とても安心感を覚える。興味がある方はぜひ一読していただきたい。

[映画]『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』 マーティン・スコセッシ監督

評点:80点(ただし、ファンに限る)

はじめて彼らのライブに行ったのは、確か98年の東京ドームだった。
元々好きでよく聞いていたが、その圧倒的なパフォーマンスを前にし、電撃にうたれたようになったことは今でも忘れない。

好きでいろんなミュージシャンのライブに行っていたし、それが高じて学生時代にコンサートの会場整理のアルバイトなんかをやったりしたので、国内外のさまざまなライブを観たが、ここまで圧倒的に完成されたものを、少なくとも私は他に知らない。

曲の順序や構成、アドリブ演奏、ライティング、セット、そして観客の盛り上げ方…
すべてが緻密に計算しつくされた、いわば完璧なステージ。これはただのライブじゃない。芸術であり、現存するあらゆる形のエンターテイメントの中でも最高に位置するものなのだと、肌で感じた。

しかしこの映画を観るまで、それは彼らの非凡さによるところが多いと思っていた。何せ、彼らは「生ける伝説」なのだ。

でもそれは少し違った。彼らはセットの細部、例えばスタッフの通用口の位置に至るまで徹底的にこだわり、時期や場所を鑑みて、その豊富なナンバーの中から最適なものを選択し、本番直前まで構想を練っていたのだ。
このような裏側をわずかながら見られただけでも、私としては満足だった。

しかし、困ったのは監督のマーティン・スコセッシだ。何せ本番直前まで曲目すら教えてくれないというのだから(ただ、これはかなり演出が入っているだろう)。
必死の説得も聞く耳持たず、自分たちのスタイルを貫く4人。スタッフ同士が激しくぶつかる。

監督は、そんな自らとストーンズの対比を滑稽に映し出していた。
その手腕はさすがだし、メンバーの魅力を最大限引き出しているあたり、自らもファンだと公言するだけはある。

舞台は、NYのビーコン・シアターという3,000人程度の小さな劇場。
ライブ自体が元米大統領クリントン氏の慈善活動の一環らしく、映画の冒頭では妻のヒラリーなど政財界の大物が訪れる様子が見れる。

しかしその冒頭と、途中で挟まれる過去のインタビューなど以外はすべてライブ映像で構成されている。
マーティンの「よし、行こう。一曲目は?」に続けて始まる『Jumpin’ Jack Flash』のリフで全身に鳥肌が立つ。

2曲目は『Start me up』だが、その後は「超メジャー」ではない楽曲が続く。この辺の選曲センスは編集したマーティンによるものなのか分からないが、結構なコア・ファンも納得だろう。

ステージの間中、止まることなく踊りまくる、ミック・ジャガー。
巧みなスティックさばきがたまらなく渋い、チャーリー・ワッツ。
地味ながらも確実にギターを全うする、ロニー・ウッド。
そして、相変わらず全然演奏しない、キース・リチャーズ。

この4人の格好よさったらない。
ミックとキースは今年で66歳。チャーリーにいたっては何と68歳になるというのに、このパワフルさはなんだろう。
正に、今自分は後世何十年に渡って「伝説のロックバンド」と呼ばれるであろう人たちを観ているのだと、はっきりと確信するできる作品だ。

映画としての出来だが、もし事前に監督がマーティン・スコセッシだと知らなかったら気づかないくらい、おそらく大抵のライブ専門の監督が撮っても同じ程度の映像が撮れただろうと思う。

ただ本番当日は、会場の狭さなど相当な制約があったはずだ。
前述のようにチャリティ活動だったからか、作品内では観客がフラッシュをたいてステージを撮影している姿が散見された。これは通常ではありえないことだ。舞台上の人間の邪魔になるし、肖像権の問題もある。

そんなことが許される、またこのようなライブに招待されること自体、今回の観客は特別な階級の人たちなのだろう。

そういったやむをえない事情は仕方ない。許そう。
しかし、しかし…! 何といっても、チャーリー・ワッツの登場シーンが少ない!あまりにも少なすぎる!!
確かに覚悟はしていたが、あまりにも出ないので段々とストレスがたまった。

カメラ位置の関係なのかもしれないが、バックバンド並みに登場シーンが少ないのはありえない。
確かにミックとキースは格好いい。でもチャーリーの渋さが分からないのか! と一人で憤慨していた。

とにかく、ファンであれば絶対に観ておくべき。映画館だから下手なライブ会場より音もいい。
オールドファンになるほど、笑い泣きしながら観ることになるだろうが。

しかし「Stonesファンでなくともオススメ」なんて気軽なことは言えない。自分がファンであるから見えなくなってしまいがちだが、普通に考えて好きでもないバンドの映画もライブも別に観たいとは思わないだろうから。

彼らは正に「こんな大人になりたかった。でもなれなかった…」と誰もが思う憧れのスターだ。
しかし今度こそ、歳を取ったら今度こそこんな「かっこいいオヤジ」になりたい。そう思わせてくれる4人だった。

やるたびに毎回「これが最後か?」と言われる彼らのライブ。映像を観ると、デビュー当時から言われていたらしいことが分かる(笑)
映画もいいが、やはり本当のライブの一体感と感動には及ばない。

また日本に来ないかなぁ~~