「貯蓄から投資へ」というスローガンが誰にでもあてはまるとは思わないし、むしろほとんどの人は投資に一生手を出さないだろう。
ただ個人的には、日本の金融機関がこれから100年安泰だとも思えないし、少なくとも年金制度は遅かれ早かれ実質崩壊する可能性が高いと危惧している。
それに、自分で汗水流して稼いだお金なのだから、政府や役人に依存するのではなく「自分のお金くらい自分で守る、ふやす」という意識をもつことが大事だと思う。
ということで僕は投資を行うのだが、自分がこれまでに身につけてきた知識などを、折を見て(備忘録代わりにも)記していきたいと思う。
何かのきっかけで見てくれた方のお役にたてれば幸いです。
今日のテーマは「サヤ取り(裁定取引)」。
機関投資家は広く行っている手法なのだが、一般にはまだまだなじみが薄い。数ある投資手法の中でも「比較的安全」といわれるこの手法を、簡単にご紹介したい。
まず、下の図をご覧いただきたい。
赤の線が東証一部、青の線は大証一部に上場している、トヨタ自動車の3か月の株価の動きである。
当然、二つの線は同じような動きをしている。
しかしある一点に注目すると、その連動がわずかに乱れるタイミングがある。
たとえば、11月下旬と思われるこの部分。
ここでは、赤と青の線がおおきく離れている。
この離れている状態のことを「サヤが開いている」という。サヤ取りとは、このサヤが開いた状態を見極めて投資を行うことを指す。
分かりやすいように、このとき赤が10,000円、青が5,000円だったとする(もちろん、同じ銘柄でそんなに株価が離れることはありえない)。
このときを「サヤが開いていてチャンスだ」と判断したら、
「赤を売り」「青を買い」
注文する。
そしてこの後、二つの線は再び近づいて(収斂して)いる。この時を「サヤが閉じた」と判断したら、
「赤を買い戻し」「青を売る」
で決済する。
このときの株価を見てみると、二つとも下降しているものの、
赤:7,500円 青:4,500円
くらいになっているとする(あくまで大体)。
二つの取引結果を見ると、
赤:10,000円売り → 7,500円買い = +2,500円
青:5,000円買い → 4,500円売り = -500円
である。確かに青の取引は損を出しているが、合計すると2,000円のプラスとなる。これが「サヤ取り」と呼ばれる手法の基本である。
基本的に
・連動性、収斂性のある銘柄の反対取引を行う
・決済はかならず同時に行う
ということを守り、その他細かい複合技(買い増しなど)を行っていくのだ。
前述のとおり「比較的安全」として、株式のみならず、先物やFXなどの為替でも用いられる手法であるが、「安全」といわれるゆえんとして「株価の上下に左右されない」という特徴がある。
上記の例で赤が大幅に暴落したとしても、青も(連動性があることが前提であるため)当然下がることが予想される。
たとえば赤が10,000円から3,000円になったとしても、青が5,000円から2,000円になっていれば、差額が1,000円分あるため、損はしていない。
差(サヤ)さえあれば、損は出さないというわけだ。
通常の株式の取引は、ある特定の銘柄を買って「上がった下がった」で判断するが、これはリスクをヘッジしている取引というわけだ。
ただ、もちろん損をすることもあるし、あくまで「比較的安全」といわれるだけで、ぜんぜん安全ではない。
収斂すると思っていた株価が思うようにいかなかったり、最悪逆の方向に動けば、損失は倍になるため非常に危険だ。
Googleで「サヤ取り」「サヤ取りとは」などで検索すると、かなり怪しいものも上位に来たりする(今日現在)。
「ラクに稼げる!」とか、「副収入で年収1,000万円!!」などの広告をGoogleAdsenseでよく見るが、実態はこの「サヤ取り」の方法を説明しているだけのものもあるようだ。
サヤ取りを行うためには、関連性のある銘柄を見つけることが必要(特にプロは、例に出したような「同銘柄異市場」はやらないともいう)だし、収斂するタイミングを見極めるため、最低一日に一度は市場を見なくてはならない。そしてそのタイミングはたいてい中々訪れないので「待つ」ことが非常に大事で、根気がいる。
それが苦にならない人はやればいいと思うし、それでも基本的に「預金するよりはまし」程度の収益でよし、くらいの気持ちでやるべきだと思う。
やはり収益を上げようと思ったら、投資といえど、それなりの努力や経験が必要なのである。
とりあえず「こんなものもあるんだなぁ」くらいに頭の片隅に置いていただき、決して悪徳業者に騙されないようにしてください。
※この記事を見て行った取引のいかなる事態に関しても責任は負いかねます。投資は自己責任でお願いします。