郵政改革案で日本が終わるって本当?

郵政改革案が決着した。

これに対する論調は「民業圧迫」とか「地銀が倒れる」というのが目立。「日本の終わりの始まり」という表現まで目にした。
でも私は「本当にそうかな」という点から考えてみたい。

鳩山さんは、この郵貯マネーを国債一辺倒の運用から脱却したいと言っているようだが、しかしかなりの額が国債に流れることは間違いないだろう。

国債の先物価格は短期で見れば横ばい気味だが、これ以上国内経済が悪くなれば、いつ急落するか分からない状況であるように思う。
そして、もし本当に国債価格が急落すれば、それこそ「国債頼み」である地銀の経営が圧迫される。

地銀とメガバンクの違いに、借り手であるか貸し手であるか、という点がある。
企業顧客を多く抱えるメガバンクは、そこに融資をすることで資金を運用できる。しかし地銀はその対象が少ないため、どうしても国債などの購入に頼らざるを得ない。
国債価格が下落して長期金利が上がり始めれば、当然地銀の経営は苦しくなる。
その他にも、国債価格の急落で金融システムに与える影響は少なくないだろう。

そんな状況の中で、このように大きな資金が国債購入の下支えになれば、国債価格だけでなく、国内経済の安定につながる可能性はある。

もちろん可能性の話で、逆になることもありうる。日本が終わる可能性もある。ただ、こればっかりは正解が分からないと思う。

一応「2011年4月にも予定する法律の施行時に、政令で引き下げを再検討する」ということだし、ただ「民業圧迫」「国内経済崩壊」という一辺倒の考え方ではなく、これはこれで一時的な経済政策のひとつと考えられなくはないという話です。

この考え方は、かなりメガバンクよりであることは自認していますが。

「賃貸か、分譲か」決断の前に意識しておくといい5つのこと

「分譲と賃貸はどっちが得?」
これは永遠の命題と言われるが、まったくもってその通りである。
なぜなら正解がないから。または、人によって正解が違うとも言う。

それは、生活において何を優先するか、ひいてはどんな人生を送りたいかという「人生の価値観」まで内包する問題だからだ。

ただ、最低限意識していた方がいい「心構え」はある。
引越しシーズンのこの季節、家を買う、または借りる予定がある人向けにもエントリにしてみた。

1:分譲と賃貸での部屋のグレード差は小さい

・20万円の家賃の賃貸
・20万円のローンを支払う分譲

では、どちらが上だろうか。

理論的には分譲のはずだ。
これは当たり前のことで、家を買った人はリスクを取っているし、この原則がなかったら不動産賃貸業というものは成り立たない。
しかし、この差は意外と僅少である。以下にシミュレーションをしてみた。

例:
・5,000万円をすべて借入で購入
・金利3%、元利均等返済の35年ローン
だとすると、毎月の支払は約19万円になる(ちなみに、総支払額は8,000万円を超える)

話題のsuumoで適当に調べた、5,000万円の分譲マンションがこちら。

それに対して、19~20万円の賃貸がこちら

とりあえず東京都心という軸で見てみたが、驚くほどの違いはないように思える。
住宅を購入すると、ローンの他に保険・税金などの資金が余計にかかるので、それを含めれば分譲は余計不利になるかもしれない。

これはおそらく、もし分譲の方が圧倒的にいい部屋に住めるとなると、誰もが家を購入する(逆もまたしかり)という、経済原理が働いていることによるのだろう。
不動産市場は規模が大きいためか、それが非常に効率良く効いているということかもしれない。

とはいえ、いざ買ってみたら同じ条件で賃貸の方が上だった、というのはやはり納得がいかないだろう。
分譲住宅を購入する際は、同じ分譲住宅だけではなく、その地域の賃貸マンションの相場も比較してみるといいかもしれない。

2:不動産の購入は、借金までして行う巨額の投資である

例えば、5,000万円借金してある一社の株を買う人はまずいない。
また、5,000万で賃貸マンションを購入し、不動産投資を行おうというのも中々思い切れるものではない。空室や価値下落のリスクが伴なうからだ。

しかし、これが自分の住宅となると、誰しもそのようには考えられなくなる。

もちろん、債権と自分が住む不動産は一緒ではない。
しかし、例えば「今5,000万円あげるから、このお金で今後30年間の住宅費としなさい」と言われたらどうするか。
もちろんすぐにマンションを買う人もいるだろう。しかし、ひとまず賃貸に住みつつあとは貯金して利子を増やそう、という考えも頭をもたげないだろうか。

投資の基本である「分散」という視点で見ると、不動産の購入は多額の資金をひとつの財産に投じている、リスクの高いものだ。

対して賃貸の最大のアドバンテージは、その時々の収入や家族構成、生活地域によって柔軟に変化できること。

今と同じ収入を、30年後も本当に確保できるのか。
確保できなかった場合、売却したことで出る損(または得)はどの程度で、自分が取れるリスクと照らし合わせてどのくらいかを、十分検討すべき。

3:負債か、生き甲斐か

上述の通り、不動産は巨額の負債になりうる存在だ。
住宅ローンを払うために何十年も働き続けるサラリーマンを、揶揄する人もいる。

しかし裏を返せば、家族のために家を買ったからこそ、それが生き甲斐となって働ける、ということもあるかもしれない。
そして30年もそのモチベーションが続くというのは、とても幸せなことかもしれない。

自分はどのような人生を送りたいか、どのようなタイプか。

4:子供に残す、税金の問題

せっかく高額で買った家、自分の子供や孫に受け継ぎたいと思うのは当然。
その時に気になるのは税金、いわゆる「相続税」の問題だ。

なぜか「相続税は高い」と思っている方が多いのだが、実際はそうでもない(なので、個人的にはもっと上げた方がいいと思うのだけど、それはまた別の機会に)。

不動産の相続税には「5000万円+(1000万円×法定相続人の数)の基礎控除」というのがある。
税金はこれを超えた場合に課税されるため、例えば1億円の物件だとしても、法定相続人が5人以上いれば非課税となる(法定相続人は少しややこしいので省略します)。

「相続税対策」という言葉だけで厄介なイメージがあるが、こと不動産だけに関して言えば、正直、一部の大金持ちが頭を悩ませればいい問題である。

5:不動産がすべてではない

「家を買うのだから、2時間の通勤を我慢」

特に日本人は、住宅を人生の基準にする人が多いと言われる。
まず家があり、それから人生の他の部分がついてくる。それは「いつかは家を持つ」ことが、大人としての通過点という常識があるからかもしれない。

しかし狭い賃貸でも、好きな場所に住むことで時間を有効活用したり、便利さを享受したりする選択肢もあってもいいはず。
できるなら、見栄や常識から一歩抜け出してみたい。

現時点で、住宅数は需要をはるかに上回っているといわれる。
現役世代の人口が減り続けていることからも、普通に考えれば、住宅の価値は目減りしていくと思われる。
購入した時より売却した時の値段が上がった、という時代は日本ではもう来ないかもしれない。

その中で、いつ「購入」というアクションを起こすのか。あるいは起こさないのか。
「正解はない」ので、自分の人生の将来設計とともに、一度じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。

日本人の、トヨタ問題に対する関心の薄さ

トヨタのリコール問題が話題にのぼっている。
ただ、私は日本人がこの問題に関してあまりに無関心すぎないかな、と感じる。

トヨタは名実ともに日本を代表する企業であり、その影響力は甚大だ。
「トヨタの社長」という個人は、コロコロ変わる「日本の首相」より重要な人物だと言ってもいいかもしれない。

確かに、トヨタ車には不具合があった。それが原因で亡くなった方もいる。
そして、当初はそれを認めずに内々で処理しようとしていたのも事実だろう。

しかし、それでも、トヨタ車のリコールは他の自動車会社に比べて圧倒的に少ない(むしろ、今までほとんどなかったからこそこれだけ話題になったのだけれども)。
それこそ、アメリカ車の安全性とは比べものにならない。

にもかかわらず、アメリカ議会はそのトヨタのトップを呼びつけ、公聴会で宣誓までさせて謝罪させた。

もちろんトヨタとしたら、これ以上のイメージの悪化を避けたいという経営的なジャッジも含まれているだろう。
しかし、日本人としては、その意味をもう少し重大に捉えるべきではないだろうか。

アメリカ車が日本で事故を起こしたとして、社長が謝りにくるだろうか。
シンドラーエレベーターの事故で、責任者が国会で謝罪しただろうか。

公聴会で証言したこの女性を責めるわけではないが「トヨタのレクサス(Lexus)を運転中に時速100マイル(約161キロ)で制御不能になり」「夫へ電話をかけたとき、「神の力が介在し」、車はすこしずつ減速して停止したという」というのは、パニックのあまりブレーキペダルとアクセルを誤ったという可能性は本当にないのだろうか。

ある調査では、今回の問題で日本のGDPが0.12%引き下げられる可能性があるという。

政府が必死になって行う経済対策で見込まれる効果が、GDPの0.4%。
これが、トヨタの特定の車のブレーキに不具合があるだけでその1/4に値するのだ。

GMのように、もし本当にトヨタが潰れるようなことがあったら、日本経済は混乱に陥るだろう。
失業者はあふれ、とんでもない不況が訪れるかもしれない。貧困が加速し、治安も悪化するかもしれない。
トヨタが、経済が社会にもたらす影響はそれだけ大きなものだ。

トヨタ車(≒日本車)のイメージが落ちて、得をするのは誰か。損をするのは誰か。

オリンピックで国民感情を高めるのはもちろん素晴らしい。浅田真央選手にも頑張って欲しい。
しかし、もう少しこの「事件」に関心を向けるすべきではないか。これでは、日本人が「経済オンチ」といわれてしまうのも、已む無しと思える。

それは「トヨタなら大丈夫だろう」という楽観視か、あるいは信頼なのかもしれない。
「アメリカなら仕方ない」という諦観であって欲しくはないと思う。

天下り対策のために、退職金控除の税制を見直すという手段

「官僚の天下り廃止」は鳩山政権の注目点のひとつだ。
天下りをすべて悪とみなすのは早計だけど、無駄を排除することは当然やるべきだろう。

そのために、個人的に「退職所得控除」の税制を見直すことは、割と効果的なのではないかと考えている。

退職所得控除というのは、文字通り退職金の所得にかかる税金を控除する制度のこと。控除というのは、簡単に言うと税金がどれだけ安くなるかということだ。
控除される額が多ければ多いほど有利なわけだが、退職所得控除は、その性質上「ゆるやかな課税」などといわれ、非常に優遇されている。

例えば、勤続30年で退職金が2,000万円だったとすると、

    800万円+70万円×10年=1,500万円
    2,000万円-1,500万円=500万円
    500万円×0.2-42万7千5百円=57万2千5百円

となり、もらったのは2,000万円でも、税金として徴収されるのはわずか57万円。実に1,943万円が丸々懐に入ることになる(計算式)。

これをそのまま所得税の税制に当てはめると、

    2,000万円×0.4-279万6千円=520万6千円

となり、所得税で520万円徴収され(住民税はまた別)、実に9倍以上となる。せめて税率を半分としても、

    2,000万円×0.2-42万7千5百円=357万2千5百円

で6倍以上だ。退職金が税金としてどれだけ優遇されているかが分かる(計算式)。

ちなみに、アメリカでは退職金も通常給与と同じ方式で課税される。

もちろん一概には言えず、税制は複雑(すぎるほど複雑)なのでこれだけやっておけばいいということではない。でも日本の風習として「長く頑張って耐えた人に、ご褒美を与える」という考え方が強く根付いているのは間違いない。
そして、これはやはり変えなくてはいけないと思う。

申し訳ないけれど、もうすぐ退職を迎えるような世代の方にも、この今の日本の負債を背負ってもらわないと、すべてを若い世代に回してしまうようでは、本当に日本はデフォルトすると思う。

あるいは相続税の税制に手を加えるという考え方もあるが、これは現段階でも決して軽くない税金がのしかかっている。年金でさえ段階的に減額されており、はっきりいってこのままでは破綻することが目に見えているのに、退職金制度は議論の対象にもならない。これは、若い世代にとってはずっと先の話だという意識の鈍さもあると思う。

「渡り」を行って、公益法人を渡り歩いて退職金をもらい続ける人も実際に存在する。
退職金控除制度が、ある意味では、利権を守ろうとする人々の「最後の砦」のような気がしてならない。

セブンイレブンが「安売り」を極度に恐れる理由

タイトルの件を、先日セブンイレブンの関係者の方に聞いたのでPostしたい。
※ただし、個人的な意見の枠を出ません。

一般的に言われている通り、コンビニで値下げを行うと

     ・通常の時間帯での売り上げが落ち、利益率が低下する
     ・廃棄分の処理費用が加盟店の全負担

という問題がある。これに対して世論は

     ・利益ばかりを求める企業体制はいかがなものか
     ・食べ物を粗末にすることはもったいない

という反応だ。
そしてその世論に押されるように、先日公取が排除命令を出した

しかしセブンイレブン側は、それでも「安売り」を断固拒否する構えだ。そのためには「廃棄費用を15%負担する」とまで言った。これはすごいことだ。フランチャイズ店からしたら、単純にその分のお金が懐に入ってくるようになるのだから。

しかし、なぜ彼らはここまで安売りを恐れるのだろうか。

それは「アメリカのセブンイレブンが破綻した一因だったから」だそうだ。
同じ系列店同士で価格競争を行った結果、消耗戦に陥ったということだろう。

通常、100円で10個売れて2個余っていたもの
 →余った2個を値下げで売る
  →通常料金で買っていた人も値下げを待つ
   →通常料金が売れなくなり、値下げが加速する

というイタチごっこだ。

だからこそセブンイレブン本部は、加盟店に多少の無理を強いてでも、全体の価値を守るために懸命になっているのだ。まるで針の穴から土手が決壊するのをふさぐように。

よくよく考えてみれば、値引きが当たり前のスーパーというのは大型店が多く、それは周囲の小売店や他社系列のスーパーへの優位性を示すためだったりする。いわゆる「物量作戦」で古くからの八百屋さんや魚屋さんを蹴散らしたわけだ。

かつ、コンビニは「24時間営業」「すぐに何でも揃う」という付加サービスもセットになっていると言える。
「確かにスーパーに行けば安いけど面倒だからコンビニでいいや」というのは、イコール時間に対して対価を支払っていることになる。本来スーパーでしなければいけない買い物の時間に遊んでいたから、深夜にコンビニで弁当を買うわけだ。

消費者にとってはそりゃ安い方がいいのだけど、コンビニエンスストアという業態自体が、安売りではなく「便利さ」を売り物にしていることは忘れないほうがいいと思う。

食品の廃棄の問題はどうだろう。
経営の基本だが、例えばある商品を100個仕入れて完売させたら、一見大成功のように思える。
しかしその商品はもしかしたら200個売れていたのかもしれない。だとすると、それは仕入れを失敗したことになる。

究極の形は「売り上げとピッタリの量を仕入れる」ことだが、それは不可能だ。
だから経営者は「予測される売り上げよりちょびっとだけ多め」を予測して仕入れる。そのため、基本的に廃棄がなくなることはない。

そもそも食料廃棄問題はコンビニだけの話ではないし、少なくともセブンイレブンは廃棄した食料を肥料にし、そこからまた食品を作るというリサイクル事業を始めている。

確かに「食べられるものを廃棄する」ということに抵抗感はあるが、読売新聞の社説のようにそれをただ「もったいない」と切り捨てるのは、あまりにも経営を知らなすぎだ。

別にコンビニの回し者でも何でもないが、「本当はもっと安く買えるのに、本部が強権を発動している」「食べ物がもったいない」というような分かりやすい論調が前に出るとつい納得してしまいがちだが、反対側の意見も知っておくと考え方が広がると思うので書いてみた。

少なくとも、何でもかんでも「安くしろ」ではなくて、「高いのはちゃんと理由がある」っていうのを忘れない方がいいとは思う。