[映画]『ツォツィ』 ギャヴィン・フッド監督

評点:55点(100点満点中)

アカデミーつながりでもうひとつ。2005年の外国映画賞を受賞した作品。
それにしても、観る作品が微妙に今更感漂うが、気にしない気にしない。

舞台はアフリカ。
豪邸に住む富裕層と、吹きざらしの土管しか住むところがない子供たち。今アフリカが置かれている貧富の格差を、否応なしに見せつけられる作品だ。

主人公は、そんな貧しい環境で育った少年。若くして強盗や殺人を平気な顔でこなす、まるで感情というものが存在しないかのような彼は、ある日盗んだ車から生後間もない赤ちゃんを発見する。
すぐに返すこともできたはずの彼だったが、そうしない。赤ん坊という絶対的に無力な存在を前に、自分が体験できなかった親からの愛情を逆の立場になって追体験するかのように、また、自分は誰かの役に立っている、生きていて構わないんだと再認識するかのように、彼は赤ん坊と接する。

幼くして拳銃を操り、人から奪い、殺すことでしか生きられなかった少年。
この映画は、責めるべきはそんな少年ではなく社会であるという明確なメッセージが見て取れる。

この絶望的な状況が現在のアフリカで繰り返されているのだとしたら、相変わらず無力な自分を呪うことしかできなくなる。何とか好転してほしいとは思う、しかし自分から出かけて行って何かを変えようとするまでの行動力や勇気はない。
「この状況を見て、お前には何ができるんだ?」と、監督は観ているものに問題を叩きつけているのかもしれない。

しかし少し不満だったのは、少年の心が移り変わっていくところの描写が足りなかったこと。
彼は作品中で確実に成長し変化しているのだが、その心境の描写が物足りなく感じた。

85分という短い時間に編集したのは勇敢だったと言えるけれど、個人的にはもう少し観たかったな、というところ。

[映画]『ノー・カントリー』 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン監督

評点:65点(100点満点中)

2007年度のアカデミー作品賞受賞作。

劇中、音楽も流れない、笑顔も見られない、とにかく陰鬱な雰囲気漂うものだった。決して嫌いじゃないが。
あらすじは、麻薬の取引がらみのマフィアの大金を、たまたま通りかかった男が横取りしてしまい、それを追いかける冷徹無比な殺し屋から逃げ続ける、というもの。

この手のストーリーであれば、この男がなぜ大金を奪わなければいけなかったのか、などが裏付けされそうなものだ。たとえば、病気の子供がいるとか。
しかし、この作品ではその点が一切描写されない。ただ単に、大金が欲しくてマフィアの金を奪った田舎のカウボーイとそれを追う殺し屋、という構図なのだ。

正直言って、それが中盤の退屈さを生んでしまった。
確かに、緊迫感は十分。しかし、何の意味もなく、ただ逃げ惑う男とそれを追う男の対決を見ているだけというのは結構つらい。
終盤の展開も、見方によっては非常にあっけない。「今までの何だったの?」というくらいだ。

ただ、観終わってからの余韻度合いは半端じゃない。
大抵の映画は、観終わって数日もすればまぁ忘れてしまう。「面白かったな」という程度の感覚しか残らないものだ。

しかし、この『ノーカントリー』は非常にあとを引いた。『マルホランド・ドライブ』と後味の種類は違うものの、同じ程度の後味の粘り方だ。

おそらくこの作品は、Eaglesの「Hotel California」の歌詞のように、「アメリカで生まれ育つ」というバックボーンがあれば、よりリアルさを伴ってくるのだろう。
残念ながら私はそうではないので、この映画の真の面白さや意味を理解できていないのだと思う。しかしそれでも、アメリカ人やアメリカ社会が抱えている闇の部分は感じることができた。

アカデミーはアメリカ映画の祭典であるが、事実上世界最高の映画賞である。それゆえ、特に近年ではどこの国のどんな文化の人が観ても面白いものが優遇されてきたように思う。
その潮流の中、このような映画が作品賞をとったことは非常に意義があったのではないかと思われる。

[映画]『あるいは裏切りという名の犬』 オリヴィエ・マルシャル監督

評点:60点(100点満点中)

一部のファンに熱狂的な支持を受けている、実話を基にしたというフランス映画を遅ればせながら観賞。

舞台はパリの警察署。
酒の席で拳銃をぶっ放すような、粗暴者の集まりである主人公レオのチームと、対照的に厳格さで組織の統率を図る、そのライバルであるクラン。

レオは出世にあまり興味がないが、クランはそのためにあらゆる手段を使おうとする。
しかし、上層部から評価されているのはレオの方だった。

そんな折、クランはとある作戦で大失敗を犯し、処罰の対象となる危機に陥る。
しかし、土壇場でクランはレオのある弱みを握り…

ダニエル・オートゥイユと、ジェラール・ドパルデューの二人がとにかく渋い。
「燻し銀」という言葉はこの二人のためにあったのか、というくらい。

「映画は目で演じる」と言われるが、正にそれを地でいく快演であったと思う。

サスペンス、ヒューマン、アクションなど基本的な要素を満載し、映画としての完成度も非常に高かったのだが、残念なのが残り30分だった。

いよいよクライマックス、主人公に非常に難しい選択が迫られる。
どれを選んでも辛いものなのだが、観ている側は「一体どうするのだろう」と、重たい気分ながらもある種の期待をする。

しかし、突如現れるバレバレの伏線と、予想通りの結末。
このような結末にしたことで、それまでの彼らの葛藤や恨み、妬み、悲しみ、そして裏切りがすべて無になってしまった。たとえどんなに後味が悪くとも、主人公に決断をさせ、それを尊重するラストにするべきだった。

また欲を言えば、かつて二人は親友であったということだが、それを少しでも描写していればもっと感情移入ができていただろう。

作品全体はよかっただけに、何ともいえない「残念感」が残ってしまった。

[映画]『アメリカン・ギャングスター』 リドリー・スコット監督

評点:35点(100点満点中)

ベトナム戦争の頃。ヘロイン、コカイン、覚醒剤などの流通でNYを牛耳ったギャングの実話を元に製作された映画。

NYマフィアの「ドン」の運転手であった、デンゼル・ワシントン扮する主人公は、今までどのマフィアもやらなかった方法で麻薬を集め、巨万の富を得る。
そして、腐敗だらけの警察内部で自己の信念を貫き、逮捕しようとするラッセル・クロウ扮する刑事。物語はこの二人の視点を通じて語られる。

全編を覆う重苦しい雰囲気は、当時のアメリカの闇をうまく表現している。
笑うポイントなど一つもなく、ただただ苦い気持ちにさせられる。

警察、司法、弁護士、監察官、そして軍隊までグルになって不正を行っているのだから、当時のアメリカがいかにおかしかったかということだろう。
そして、それが今ではなくなっているのか、という疑念を持つと空恐ろしい気分になる。

ただ映画はといえば、よくいえば淡々と事実を描写、悪く言えば映画としてはあまりに山も谷もない出来映えになっている。
どちらかというとマフィア側の視点から撮られている内容は、ともすればその行動を肯定する内容にも取られかねない。

悪いのは社会であって、こういった輩は必然的にでたいわば必要悪だと。そういった中にも、信念を持って活動している人間がいるのだと。

もちろん監督にそのような意図はなかっただろうが、人によってはそのように感じてしまうのではないか、というくらい主観が曖昧だった。

また、当然刑事がマフィアを追い詰める姿を期待するのだが、その描写が非常に薄い。よって、このビッグネーム二人が本作内で絡むこともほとんどないのだ。
個人的に、それは非常に残念であった。

ドキュメンタリーにもドラマにもならず、結局どっちつかずの作品になってしまっているように思う。

そういった意味では、同じ警察腐敗物で、また同じくラッセル・クロウが(まだ無名のときに)出演し、サスペンスとエンターテイメントに特化した『L.A.コンフィデンシャル』の足元にも及ばない作品となっている。

当時のアメリカのマフィアについて、そして実在したフランク・ルーカスに興味があれば観る価値があると思うが、それ以外の方には特にオススメできない。

109シネマズの「シネマポイントカード」は、実はかなりお得

今回は、109シネマズによく映画を観にいくという人にとって、ちょっとお得なTipsを。

109シネマズには「シネマポイントカード」というEdy付きカードがあるのだが、これが結構使えるという話。具体的には、以下のような特典がある。

    1.入会時に2,000ポイント付与
    2.「良・席・予・約」というシステムを使い、ネットで事前に指定座席を取れる
    3.「良・席・予・約」利用で、一枚につき1,000ポイント。6.000ポイントたまればタダ券一枚に
    4.ポイントの有効期限なし
    5.毎週火曜日は1,300円
    6.2009年4月まで、毎月19日は1,000円
    7.ペアシート(2名 4,000円)、エグゼクティブシート(1名 2,500円)が通常料金
    8.通常の買い物でも1,000円につき30ポイント(※)
    9.劇場では専用端末を使えるので、売り場に並ばなくてよい
    10.その他、試写会などの各種イベント招待

    ※ただし、クレジット機能付きのブロンズカードのみ

この中で、特に「3」の6,000ポイントでタダ券一枚というのは、映画を定期的に観にいく人にとってはかなりお得だと思う。

1,800円 × 6 = 10,800円
1,800円 ÷ 10,800円 = 約16%

ということで、単純計算で17%の還元率のあるカードということになる。

チケットの値段は関係ないので、映画の日やレディースデーでも1,000ポイント付与される。
それで貯めたポイントで一般チケットを買うとすると、

1,000円 × 6 = 6,000円
1,800円 ÷ 6,000円 = 30%

というかなり破格な還元率だ。

ちなみに、以前私が入ったのはクレジット機能も付いた「ブロンズカード」というもので、入会時には6,000ポイントが付いていたり、無料でFeliCaポートであるパソリが付いていたりと、結構な大盤振る舞いだった。

それが祟ったのかどうかは分からないが、残念なことに現在ブロンズカードは新規入会停止中だそうだ。

とりあえず、あまり頻繁に109シネマズに行くわけでもない私でも、これらの機能は非常に便利で、映画に行く際のちょっとした「気構え」が大分取れた気がする。

同時にこれがシネコンの強みであり、こうして囲い込みをしていくことで生き残りを図っているのだろうな、と思った。

参考:
http://109cinemas.net/pointcard-2.html
http://109cinemas.net/pointcard-privilege.html